« June 2005 | Main | August 2005 »

30 July 2005

シェイクスピアと歌舞伎

『NINAGAWA 十二夜』。
シェイクスピアと歌舞伎の2つの組み合わせが歌舞伎座で上演される! 演目発表があってからずっと心待ちにしていた。

シェイクスピアと歌舞伎といえば、1991年に新大久保の東京グローブ座で面白い公演があった。染五郎さんがハムレットとオフィーリアの二役をこなす歌舞伎の『ハムレット』と一緒に、浄瑠璃の『テンペスト』、狂言の『フォルスタッフ』が、シェイクスピアへの新しい試みとして上演されたのだ。3つのシェイクスピアは、歌舞伎、浄瑠璃、狂言にぴったりとはまっていた。

あのとき、シェイクスピアに登場する恋愛模様、怨念、復讐、思い違い勘違い、幽霊といったものは、歌舞伎のものたがりに登場するものとよく似ているんだなぁと気づかされ、小躍りしたいほどワクワクした。14年前のこのワクワクした感覚探しは、その後もわたしの趣味嗜好の方向性に色濃く残っているように思う。 (この3つ、ぜひもう一度再演してほしい)

当時のわたしはシェイクスピアの面白さに少しずつ目覚め始めたころで、東京グローブ座で上演される、英国の劇団のシェイクスピアものに足しげく通っていた。難しい古い英語の舞台に、見栄をはってイヤホンガイドなしに挑んでそのまま寝てしまったり、歴史ものに面白みをなかなか見出せず、ジーンズシートをはりきって確保しながら、『リチャードⅢ世』の台詞を子守唄に寝ほうけたり。そんな高い授業料を払い続けて得たのは、「シェイクスピアの喜劇って最高!」ということだった。

そして、7月の歌舞伎座公演は『十二夜』! シェイクスピア喜劇である。菊五郎劇団、特に菊之助さんの新たな挑戦としてシェイクスピアが選ばれ、蜷川幸雄さん演出が実現した。

鏡がはりめぐらされた舞台、ハープシコードの音楽、小さな子どもたちのキリシタン風コーラス、こまめにゆったり(やや、もったり)と交替する廻り舞台。ふだんの歌舞伎とは微妙に異なる舞台演出はもちろん面白いものであったが、なんといってもすばらしかったのは、脚本と、菊之助さん、菊五郎さん、左團次さん、松緑さん、亀治郎さんなどの役者陣だったと思う。蜷川さんらしさというのものは、わたしはよくつかみとれなかった。

歌舞伎に比して断然に台詞の量が多いために、全体的にはお芝居を観ているような箇所も多々あったとも思う。歌舞伎に姿を変えながらも、原作に実に忠実に書かれた脚本は、シェイクスピア喜劇の軽快なことば遊び、おかしみを、テンポそのままに生き生きと残していた。

以前、世田谷パブリックシアターで観た、野村萬斎さんの『まちがいの喜劇』もよかった。つくり手、演じ手がシェイクスピア・コメディ・ワ-ルドにすっぽりとはまり切っている。本物のシェイクスピア、本場で観るのと違わないシェイクスピアの真髄を堪能させてくれた。

今回も最高にハッピーな気分で歌舞伎座をあとにした。こんなにハッピーなシェイクスピア喜劇、なんだか久しぶりに観たような気がする。目にもまぶしい色づかい、奥ゆかしき和ことばといった歌舞伎らしさと、シェイクスピア・ワールドとの見事なマッチング。思い返すたびに、帰り道にふと、にやりとしてしまった。

6月のコクーン歌舞伎『桜姫』よりも、わたしにはしっくりなじんだような気がする。

歌舞伎座 七月興行情報

| | Comments (4) | TrackBack (1)

25 July 2005

食のヴァラエティ

先月、友人が泊まりに来た。来日が3度目のデンマーク人。2年前の10日ほどの滞在中も串揚げ、お好み焼き、お寿司、和食割烹と毎晩のように日本食を味わってもらうべく外食し、もちろん今回もともに外食を楽しんだ。

やきとり専門店に行き、鶏コースをオーダーする。突出し、さしみ、わさび、梅ささみ、正肉、つくね、煮込み、手羽先の唐揚げなど、鶏づくしの料理が並び、鶏スープ、麦とろ、無農薬カボチャのアイスクリームのデザートで〆。そのひとつひとつを、鶏のどの部位をどう調理したのか、お店の方に丁寧に説明を受けながら頂く。もう何度も通いなれているお店なのに、今までなんと無意識に無頓着な食べ方をしていたことか。

食べることが好きな繊細な友人は、ひとくちひとくちに感嘆の声をあげながら食べ進め、日本の食のヴァラエティは他の国に類を見ないほどのものだと言う。そんな様子を見ながら、『食』を通して得られることの大きさに改めて感じ入っていた。

korea21友人の滞在の前週には韓国で、野菜を多く食べる韓国の食文化、食のヴァラエティを堪能したところだった。どんなときにもキムチが添えられているので、辛さにさほど強くない私の口が、「味わう」力を失っていたのも否めない。でも、そんな私の口さえ、店によって異なるキムチの旨みに感嘆符! テーブルいっぱいに彩り豊かに並ぶ食材のなかには、今まで見たことのない葉っぱの類もちらほら見られた。
(写真は水原カルビを求めて訪れたスウォン-水原-の世界遺産、華城の城壁。ソウルから列車で1時間弱)

食べたいもの、食べにいきたい場所を付箋に書き出して空欄のスケジュール表に貼り、食を中心に3泊4日の予定をたてる。それでも、韓国はまだ2回目なので、食べたいものを全部食べきれていない。次回の訪問で食べ忘れがないように、今回食べ損ねたものの付箋をそのままガイドブックの内表紙に貼って残した。

L1友人が帰った翌週、今度はマレーシアのランカウイ島に行く機会を得た。マレー系、インド系、中国系など、他民族が集まったこの国には、いったいどんな『食』があるのか。しかし、事前勉強をまったくしないまま訪れたので、フレッシュなフルーツのジュース、香ばしいサテ(焼き鳥)、ちょっと無味乾燥な感じのナシゴレン、ピリリと唐辛子のきいたタイ料理をなんとなく楽しんで帰ってきた。

豚肉を食べないイスラム教徒が多く住む国ならではの料理がきっとあるに違いない。今までずっと欧州一辺倒で、ここ数年でやっとアジアの面白さに気づいた私には、海外の南の島は初めての訪問。自然そのものに身をゆだねながら、自然を保存していくには、私たちの確固とした意志と努力がないともうどうにもならないことを実感する。新たな旅のかたちを再発見させてくれたマレーシアのランカウイ島。ぜひまた訪ねて、今度はもう少し『食』のことを知りたいと思う。

『食べる』ことは『生きる』こと。
先日、食関連の雑誌(おすすめします!)の編集長をされている方とともに、三軒茶屋のお気に入りのごはん屋さんに行った際に、そんな話しをした。毎日、仕事や時間に追われて、ついつい食べることをおろそかにしがちなことも多い。人生で元気いっぱいにおなかいっぱい食べたいだけおいしく食べられる時期は案外短い。本当にからだにいいものをちゃんと見極めて、食のヴァラエティを楽しむ余裕を持ちながら、きちんとした食生活を送りたいなと思ったのだった。


<韓国>
 (食欲と興味が先立って写真のことすっかり忘れて平らげてしまったことも。
  かろうじて写真に残ったごはんを紹介します)

korea41a korea41b korea41c korea41e

  • チファジャで韓定食
    (国家重要無形文化財の女性による韓国定食料理のお店の三清洞店。伝統料理が供される店内はモダンなインテリア。デパートでもモダンにラッピングされた、このお店のきれなお菓子が販売されている。両手で丁寧にお金を受け取るチマチョゴリ姿の女性店員がとても印象的だった)

korea31 korea51 korea52 korea53

  • 明洞餃子でのカルグクスなどの三品
  • 松の実粥
    (観光客向けに毒された感のお店が多いことも否めない。あえて店名は載せませんが2日目に行ったお店はそんな感じでかなりがっかり。このお粥は路地裏の日本語が通じない小さなお店で。キムチはもちろん、お粥もとてもおいしかった。またお粥を食べるならココ!)
  • 水原カルビ
    ヨンボカルビで。多肉植物みたいな葉っぱのあえものに遭遇。その後マーケットでも見かけたけど、なんていう植物だろう)
  • 参鶏湯
    (日本人客がとても多かった百済参鶏湯だったが、本当においしくてびっくり!もうおなかがいっぱいで今夜は夕食はパスと思っていたのに、気づいたら一人前をしっかり平らげてしまっていた)

korea54 korea55 korea56 korea57

  • 海鮮チヂミ
    (海鮮鍋目当てに行ったお店で。壁いっぱいに貼られた観光客の名刺にちょっと辟易。さらに観光客ずれしたプッシーな店員、不明朗会計にげんなり。もう行かないなぁ)
  • ソルロンタン
    里門ソルノンタンで。素朴な店内に『我々は伝統を守ります!』みたいな内容がしたためられた一筆がかかっている。おいしかったけど、前回行った江南のトクンチプトルソッソルロンタン -紹介ページみつけられず- というお店はちゃんと釜飯だったし、もっとおいしかったような気がする)
    隣の写真はキムチの入った大きな入れ物。それぞれ好きなだけお皿にとって、ハサミでカットして食べる。
  • 韓定食
    (仁寺洞の智異山で。片ひざたてながら食べている人々の姿が印象的。韓国の「残す」食文化を知りつつも、「残してはいけない」感覚の日本人な私は心配になりながら、テーブルいっぱいに次々に並ぶお皿を見る。でもほとんど残して離席する地元の人を見ならって店を出た。さほど空腹でなかったのも一因していると思うけど、ちょっと大味感)

今回の韓国での一番のお気に入りは「ホットック」。これも食べたい気持ちが先立って写真が一枚も残っていない食べ物のひとつ。トウモロコシの粉ともち米をまるめた生地のなかに、黒砂糖、松の実、シナモン、ゴマなどが入っている(お店によって味が違う)。大きな鉄板で平たく焼いて売っていて、見た目は中国の葱餅に似ている。焼きたてが本当においしい。屋台で必ず見られるおやつで、ロッテデパートの地下にも売っている(でも屋台のほうがおいしい)。

仁寺洞においしいホットック屋さんがあると知り、探したがみつからない。地図で印のついたところにはおみやげもの屋さんが構えている。ダメもとで地図を見せて尋ねると、以前はホットック屋をやっていたが、おみやげもの屋に変えたのだと残念そうにジェスチャーで伝えてくれた。本当に残念!

ホットックをすっかり気に入った私たちは最終日に南大門までタクシーを飛ばし、ホットックを12枚購入し持ち帰った。帰宅次第冷凍保存したものをあたためなおして食べるけど、やはり本場の焼きたての味は戻らない。

ご参考:
 レシピ:http://myseoul.hp.infoseek.co.jp/recipe/tokku.html#hotok
 屋台の風景:http://www.platon.co.jp/~kei/korea/ro/hottk.html
 冷凍ホットック:http://store.yahoo.co.jp/eprice/a5d5a5a1a51.html

<ランカウイ>

L21 L22 L23 L24 L25

  • サテ
  • ピンク色に着色されたココナッツの入ったお饅頭
  • 苦瓜に似た野菜?
  • 暗闇で売られる香り高き(?)ドリアン
  • 左奥はお豆腐っぽい。試食したいが勇気なし

| | Comments (2) | TrackBack (0)

« June 2005 | Main | August 2005 »