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26 April 2006

チェルシー・フラワー・ショウ 2002 <3>

デザイナーの個性が光る
それぞれのショウ・ガーデン
(いずれの写真もクリックすると大きめの画像が開きます)

1_2 19のショウ・ガーデンのなかで、Gold(金)メダルを受賞し、今年のベスト・ガーデンにも選ばれたのは、Roger Platts氏の"Garden Open"です。庭を囲む人々のあちこちから、「これが一番好き」という声がもれ聞こえてきました。古びたレンガの壁をつたうバラ、風化したオーク材のパーゴラとサマーハウス、さびた窓わく、うっそうと植え込まれた植物、フトイやハスが植えられた池などが、今年のトレンドである「Naturalistic(自然)」な風景を作り出していました。

2_2 黄色い表紙でおなじみのオープン・ガーデンのガイドブック、通称「イエロー・ブック」を出版している"The National Gardens Scheme"の75周年を記念してデザインされた、"Garden Open"という名前のこの庭も、「お庭公開中」といったところでしょうか。庭の片隅の小さなテーブルに黄色い表紙のガイドブックを置く、さりげない演出が印象的でした。そして、その小さな演出をみつけて、指をさしながら嬉しそうに話しをするイギリスの人たちがほほえましかったです。

3 Gold(金)メダルを受賞した二つめのガーデンは、アイルランド人の女性デザイナー、Mary Reynolds氏による"Tearmann si - A Celtic Sanctuary"です。アイルランドの草原から運んだ植物や岩が使われた「Naturalistic(自然)」そのものの庭。ケルト民族の神話をもとに作られ、ほかのどの庭とも趣の異なる、荒々しい自然のなかにも静けさを感じさせる神聖な雰囲気をかもし出していました。

アイルランドの野草がびっしりとはえた岩を丸く積み上げたアーチをくぐり、庭の真ん中に置かれた石のイスに目をつぶって耳をすましたら、はるか遠い昔のケルトの国にとんで行けそうな気がするほど。石のイスは、大地・空気・水・火の要素をあらわす中心のスペースを向いて、東西南北の位置に4つ置かれていました。

4_2 三つめのGold(金)メダルを受賞したのは、チェルシー・フラワー・ショウのスポンサーであるメリル・リンチの現代的なガーデンで、Stephen Woodhams氏による"The Sanctuary"。つるりとした石の能面のような彫刻が壁にかけられ、正面奥の水の流れる壁に白い丸が浮かびます。その白い丸はほんのり電気がついていて、月なのか太陽なのか・・・。白くくもった色の葉と花ばかりを組み合わせた植え込みがさらに幻想的な雰囲気。毎日の忙しい生活に疲れた現代人のための平和で静かなスペースです。デザインこそ現代的ですが、水と植物に囲まれた癒しのスペース提供という見方では、やはり自然回帰の傾向なのでしょうか。BBCの番組収録が始まるところだったので、びっくりするほどたくさんの人々がこの庭を取り囲んでいました。

では、そのほかのショウ・ガーデンもいくつかご紹介しましょう。

"The Healing Garden" by HRH Prince of Wales and with Jinny Blom
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チャールズ皇太子が故クイーン・マザーにささげるためにデザインした庭です。薬効があったり、料理に使える植物を中心に125種類選んで植え込まれ、あたりにほんわりとよい香りがただよっていました。クイーン・マザーは、ヒーリング(治す、癒す)のプロセスに植物を使うことに興味を持っていたそうです。デザインのポイントは直線や角ばった部分を持たないこと。自然素材だけを使って編んだ垣根を古代から伝わる伝統的な方法で設置して、大きなかまくらのようなドームが作られていました。緑がしげるその屋根もやさしく丸くカーブ。
チャールズ皇太子にとってのガーデニングは、バッキンガム宮殿の小さなスペースでトマトやレタスなどを育てたのが始まりだったそうです。Silver(銀)メダル

"A TreeHouse Garden" by John Murdoch
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伝統的なバリのロングハウスをもとに、大きな木の上に部屋をつくったガーデン。部屋はたっぷりとしていて、広々としたリビングルームのよう。木の下のガーデンはとてもシンプルで、小さな池と小さな水の流れるスペースの脇にカラー、アヤメ、ホスタなどが植えられていました。竹や柳、流木などいろいろな種類の自然の木を使ってすべてを作り上げているのがポイント。Silver-Gilt(準金)メダル

"The Garden of Transparency" by Charles Funke Associates
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His Highness Shaikh Zayed bin Sultan Al-Nahyanがスポンサーのガーデン。今回が5回めのチェルシーで、これまでの4回はアラブ風のテーマでしたが、今年は初めてヨーロッパ・スタイルのガーデン出展だそうです。トピアリーのアーチが並ぶ下にハスが浮かぶ長方形の池。その奥に大きな白い壺が置かれ、まわりに植えられているのは白いバラ。アーチのすきまから入る光と、緑と白だけのガーデンが水に映って、涼しい透明感がありました。ヨーロッパ・スタイルとはいえ、壺はどこかアラブ風。Silver-Gilt(準金)メダル

"Elevation" by Erik de Maeijer and Jane Hudson
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「円」ばかりで構成されたガーデン。丸いウッドデッキのまわりをブルーの濃淡の植物がぐるりと囲み、眠り心地のよさそうなハンモック、石や木でできた球状のオブジェが配置されて、アウトドア・リビングといった趣。とてもモダンなデザインなのですが、丸い形と、使われている素材がなじみ深い自然なものが多いせいか、やさしくなごめる空間になっていました。ポイントは、大きな透明のオブジェの中で渦まく水。すべてが丸く静かで動きがないなか、激しく渦をまきながら唯一動く物体。ガーデンのタイトル"Elevation"の意味である「高揚させること、高めること、元気づけること」が強く印象づけられたオブジェでした。Silver-Gilt(準金)メダル

"Wherefore Art Thou…?" by Sarah Brodie and Faith Dewhurst
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淡いピンクの家とカラフルな花々の植え込み。シンプルでモダンな中にやさしいロマンチックさがあふれているガーデンでした。デザイナーの2人の女性は、シェイクスピアにインスピレーションを得てこの庭をデザインしたそう。21世紀のロミオとジュリエットが会うためのガーデンで、右のほうにはジュリエットがあらわれるバルコニーもあります。家へ続くタイルにまでチューリップとバラの絵が描かれていて甘さがいっぱいなのですが、なぜか甘すぎないのは、丸く連なるトピアリーの植え込みや、メタルなどの素材づかい、元気でカラフルな植物の色づかいなどによるのでしょうか。私たちの庭づくりのヒントがみつかりそうな身近さを感じる庭でした。Bronze(銅)メダル

"The West Midlands Shizuoka Goodwill Garden" by Julian Dowle and Chris Caligari Garden Design
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静岡県とイギリスのWest Midlands地方共同出展のガーデン。2004年には、静岡県で「しずおか国際園芸博覧会 浜名湖花博」も開催されます(詳しくは、http://www.flora2004.or.jp/)。
チェルシーにつくられたのは、イギリスのカントリーサイド、West Midlands地方の農家の中庭。古びたトラクターがとまった納屋、納屋につづく小道、全体に植えられたワイルドフラワーのやわらかなカラフルさがコテージガーデン風でした。Silver-Gilt(準金)メダル

"World of Koi" by Roy Day, The Wonderful World of Koi
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丸いすべすべした庭石がしきつめられ、盆栽を配置し、カエデ、モミジが植えられた日本風な雰囲気のガーデン。ですが、竹でできたベンチの上に洋風のパーゴラがあったり、庭のつくりはイングリッシュ・ガーデンです。手前に主役となる大きな鯉が泳ぐ池があり、この庭の前に立つ人々の視線はすべてといっていいほど鯉に向けられていました。"big fish!"とびっくりしながら・・・。チェルシーのこのショウに生き物が登場するのは初めてのことだそうです。Bronze(銅)メダル

"Garden of Discovery" by Patrick McCann
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マリー・キュリー・癌センターのためにPatrick McCann氏がチェルシーでデザインするのは今年が4度め。キュリー夫人がラジウムを発見して100周年にあたる今年は、その業績を称えて夫人の家、庭、研究室が書籍などをもとにしながら創られました。
薄いグリーンのかわいらしい家の裏庭に広がる芝生。ブルー主体の花々とブロンズ色や黄色の葉が丸く植えられた花壇をたどりながら奥に進むと、夫人の研究室があります。乳鉢、フラスコ、顕微鏡が置かれたガラス張りの明るい部屋は居心地がよさそう。Silver(銀)メダル

"The Stonemarket Garden" by Geoffrey Whiten
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パテオ・スタイルのモダンなガーデン。面白いのは、できるだけリラックスした時間を過ごせるように、メンテナンスが少なくてすむ植物を植えていることでした。コンテナに植えられた植物が控えめな分、大きなチェス板のセットや、涼むための小さなプールがあったり、アウトドア・リビングとして楽しめるものが工夫されたスペース。
このデザイナーはチェルシーに出展するようになって今年で30年になるそうです。Silver(銀)メダル

※このリポートはMainichi INTERACTIVE(毎日新聞)に2002年に連載したものです。イベント日時などは当時のものですので、ご注意ください。

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